若めの女性から1本の電話がかかってきました。
「敷布団の側生地が破れたので修理はできませんか?」という問い合わせでした。
綿わた布団であれば、側生地を変えることは可能ですが、伺ってみるとウールを使った洋風の敷布団のようで、この場合は基本的には側生地交換や修理はできません。
ただ「すずきやのネーム」が付いているので電話したとのことで、6年前に婚礼布団としてお母様から持たせてもらったすずきやオリジナルの敷布団でした。
お母様お任せで買っていただいたようなので、この娘さんはすずきやの存在はほとんど知らなくて、どうしようかと布団を見たら「すずきやネーム」を見付けたので相談があったという次第です。
すずきやの布団で、しかも婚礼として、しかもお母様はその後亡くなられ、せっかく婚礼で持たせてもらったので、何とか修復したいとの想いのようでした。
「それならなおさら!」と、まずは傷み具合を見させてもらおうとお伺いしました。
ここが実店舗しかできないところです。
とりあえず見させてもらうだけでも、郊外のショッピングセンターではそうはいきませんから。
お客様に聞くと、敷布団カバーを掛けずに、敷パッドをそのまま上に載せていただけで、しかも御主人が汗かきなので毎日干していたようです。カバーを掛けずに毎日干していたので、紫外線で側生地が劣化し、自然に破れてしまったところがあったり、取り込む際や運ぶ際にひどく破れてしまったようですね。
うちの母は針仕事がとても上手く、器用なので「何とかやれることはやるから受けましょう」と言ってくれました。破れているところには中から当て布をして縫い、破れたヘムの部分にはバイヤステープなるもので覆って苦戦しながら縫っていました。マチ付きですので、マチ上下のヘムを、かなりの寸法を縫っていましたね。
お見事!ふとん屋に嫁いで45年、さすがの熟練技です。
ヘムもすっかり修復。破れていたところもどこだか分からないくらいに縫い上がっています。きっとお客様も驚き、喜んでいただけることと思います。
6年経過ですが、かなりへたっていましたので、御主人には買替えを検討していただいています。お母様からの思い出の品ということですので、この後は丸洗いしていただいて、お子さんにお使いいただくようです。
お客様の世代がつながって、とてもありがたいお問い合わせでした。